忍者ブログ
2024.05│ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31
青い大学ノートに手書きで「交換ノート」と書かれている。
2024年05月03日 (Fri)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2012年06月06日 (Wed)
b48483_icon_17.jpg



1年ぶりになってしまいましたが、今回は日記というよりは今更ながらの過去設定になります。
きっかけはお手紙の読み直しです。
暫定で出来ていたものを改めて書き直したので、ちょっとは読みやすくなってると思います。

可能な限り表現を凄まじくしているので、ご注意ください。

1.記憶



『……ボクの、故郷?』

そのキーワードを目撃したとき、僕にはまるでピンとこなかった。
他人事の問題のような……自分とはかけ離れた単語だと感じる。
故郷とは、人が生まれた地を指すのか、懐かしむべき場所を指すのか。
自分にはわからないことだった。
しかし、当時の"僕"は、むしろ彼女に自慢の作品でも見せるかのような。
そんな気持ちで、故郷へ行こうと手紙を書いていた。

『……本気で?』

それはボク自身が理解できないことだった。
中学生の卒業を控えた歳の冬だったことは覚えている。
それは、彼女自身にたくさんの興味を覚えて求めていたあの時だ。
その気持ちのほうは今でも変わらないし、今もその気持ちは強いくらいだ。
しかし……今、ボクが生まれた場所を見せたいかというと、そんなことはなかった。

場所は東北、その地域の名誉を汚さないために言うが、ボクは昔育った場所の地域自体を悪く言うつもりはない。
しかし僕の育った環境は、懐かしい故郷と呼べるような場所ではなかった。
思い起こせばそこは、ボクにとって汚れでしかないところだった。


今も頭につけているこのバンダナ。
そもそもこのバンダナ自体、僕の所持品ではなかった。
……これは、バンダナが、まだ白かったときの話だ。
ボクの故郷となるはずだった場所、そこで事件が起きたのだ。

小学校でのいじめっ子が、僕に悪さの片棒を担がせようとしたのだ。





僕が住んでいた集落で祭られていた神様がいた。
大昔はその神様の怒りを静めるために生贄を出していたなんて伝説があるけれど、大人はもちろん、子供も、僕自身も信じていなかった。
立ち入り禁止の森の中にある小さな祠だった。
本当に小さな祠で、人口の鳥の巣のようなものだった。
おまけのように取り付けられている土台の上に、ハエの集った腐肉とお猪口が供えられていた。
腐肉にはハエ以外にもありの行列のようなものが張っており、供えられてからずいぶん時間がたっていることがわかる。

『ほら、壊せよ』

『え』

先導していたいじめグループのボスが言った。
僕は、何をしろといわれたのかいまいちわからなかった。

『このチンケな木箱壊せって言ってるんだよ。』

『え えっ』

もうすでに僕は、上がり病の発作のような息をしながら返事とはいえない返事をした。
やだよと言えば叩かれる。叩かれたり殴られるのは痛いから嫌いだった。
でもそんな僕でも、これからどんな罰当たりなことをさせられるのか予感はしていた。
気まぐれでやめてくれるのを願うしかなかった。

『はあ?おまえ にほんごつうじねえのか?』

『うっぜーんだよおまえはよ~』

およそ聞き慣れた憎まれ口だが、僕を怯ませるには十分な呪文だった。
どこからか見つけてきた一振りの棒を無理やり僕に握らされた。

『大人はだっせーよなあ こんなちっこいのあるから来ちゃだめとかさー』

『おれたちの秘密基地にしようぜここ』

『とろとろすんなよほらー』

非力な僕の棒振りでも、容易く祠を叩き割ることができた。
頭の中でごめんなさい、ごめんなさいと念じて泣きながら叩き続けた。
集っていた虫を棒で叩き、足で踏み潰した。
そこまでやると後ろで見ていたボスが僕を突き飛ばし、豪快に木箱を壊し始めた。
迫力ある壊し方がすきなんだろう。柔道習ってるって言ってたくらいだ。
僕は心底ほっとしていた。もう壊さなくていい、僕はきっと悪くない。
踏まれてばらばらになっていた虫を見下ろしながら僕は笑っていた。

『……ん?』

それで僕は気づいた。

嗚呼、僕もあいつらと何も違わないんだ、と。

自分より下にあるものを見て安心している。
そうだ、自分はこうならずに済んだのだと、だからきっと笑ったんだ。
神様はきっと、それが気に入らなかったんだ。
だから――……





2.蟲神




『いや……。』

その時選ばれたのはただの偶然かもしれない。

『なん……なんだ……。』


泥沼に埋まったかのように、僕のひざから下は黒く染まっている。
突然起こったことだった、しかし僕はそれを頑なに、彼らの怒りだとか、裁きだと感じていた。
それは全部、地中から這い出てきた虫。
それもだんだんと僕の体を覆い、しかも早くなってきている。
そして痛い、1匹1匹の虫が僕に噛み付いている。
秘密基地建設中のいじめっ子たちは僕のそれに気がつかない。
もしかしたら彼らにもこの危険が及ぶかもしれないが、それより僕がどうにかなりそうだった。

『た……たすけえッあがあッぐぐーーー』

大きく口を開いたとたん黒虫が口から耳から鼻から入り込んでいった。

『何やってんだ?あいつ』

『しらねー』

『頭おかしくなったんじゃね?』

気がつけば地面一体が虫に覆われているのに、いじめっ子たちは気がつかなかった。
虫の姿が見えているのが僕だけだと気づいたのは、全身が包まれたときだった。



――…もしも虫と人間の大きさが逆で、小さな人間が大きな虫を退治したいならどうする?
戦うにはあまりに強く、大きく、そして数が違う。
しかし知恵がある者は気づく。
そのような強大な敵には、"共食い"させる
それがいい。―――



『うわあああああああああああ!!!うわ!うわあああああああああああああ!!』

気がついたとき、僕の右足がなかった。
続いて左足がバンと飛び散った。まるで小型爆弾でも内蔵されてるのかと思うほど鮮やかに四散する。

『いだいいいいぃいい!!いぎいいいいいッッ!!!』

思い切り叫んでいる間にも右手が粉々に吹き飛び、指がちぎれた。
残った左腕が取れかけたときは、痛みより絶望だけが残っていた。
よく見ると、引きちぎっているのは全部さっきの虫だ。
引きちぎった手足に紫色の体液をかけ、重酸にかけられたかのように異臭を放ちながら溶けていく。
耳も鼻も溶かされ肌が焼けていく。
どうにもならずに死ぬことを悟った僕はそのまま静かにしておくことにした。

『いでえー!いでえよおー!!』

『うわあああああ!!』

『ぎゃあああああああああああああ!!』

まだかろうじて生きていた鼓膜を叩いたのは彼らの叫び声だった。
嗚呼、彼らも死ぬのか。
天罰だ……そうに違いない。
叫び声と泣き声が少しずつ減っていく。妙な感覚だ。
僕はまだ死んでいないのか。

『やめろ!やめろおおお!!』

『足があああ!!あああああ!!』

『やめて……やめてえ……』

ははは……いい気味だ。
みんな……みんな死んでしまえばいいんだ。
苦しめ…もっと苦しめ……。

『いやあだあ!おかーさん!!おかーさん!!』

『うっ…うっ…やめろお……』

そうだ、僕らをいじめるから悪いんだ。
美味しい……
お前らさえ…お前らさえいなければ……

……美味しい……?

『やめてぇ……琉璃ぃ……』

『え』

見覚えのある静かな森だった。
僕は両手があるし、足もある。
けど僕の目の前にいるのはいじめっ子の一人。
すごくもがいている。よく見たら僕の両手が彼の肩に食い込んでいる。

『琉璃ぃ……ごめん…ごめんなさい……』

『え えっ』

彼を見て鼓動が高鳴る。
大粒の涙が零れ落ちる彼の目に映ったのは、耳と鼻がただれ落ちた化け物だった。
何だ…これ……。怖い……、美味しい……。

『……ん?』

そこにもう、彼の首はなかった。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
←No.33No.32No.31No.30No.29No.28No.27No.26
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新CM
[03/22 クロウリア]
[10/13 クロウリア]
[10/12 琉璃]
[10/12 クロウリア]
[10/12 琉璃]
プロフィール
HN:
琉璃&クロウリア
性別:
非公開
自己紹介:
===================
 このブログで使われる作品は、
株式会社トミーウォーカーの運営する
『シルバーレイン』の世界観を元に、
株式会社トミーウォーカーによって作成されたものです。
 イラストの使用権は作品を発注したお客様に、
著作権はそれぞれの絵師に、
全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
===================
バーコード
ブログ内検索
P R